ゆめねこはうす

気になった本、歴史、音楽などの覚書き

窓辺の猫(3)〜アーチャンの最後の日・危篤

 アーチャンの入院手続きを済ませ、5分後に車で家に着いたらすぐに携帯が鳴りました。
 病院からで、アーチャンの危篤を知らされました。
 なんでも、点滴をしようとしたらアーチャンが暴れ出し、気が高ぶって心臓が止まりましたが回復したそうです。
 なんてことでしょう…。
 そばにいてあげれば良かったと思いながら、あわてて病院へ戻りました。

 病院では処置室で管や線を付けて横たわっていました。
 先生がそばで処置をしながら様子を看ていました。
 アーチャンの意識はないみたいでした…。

 今日は出かけずにずっと家にいれば良かった。
 そして抱っこしてあげていれば良かった。
 病院でも付き添っていれば良かった。…

 いろいろな後悔が頭の中を薄巻いていました。

 アーチャンは、ここ半年はずっと病院通いで、家でもインシュリンの注射を毎日していました。
 きっと苦しい日が多かっただろうね。
 でも猫は苦しくても我慢しちゃうそうです。
 あまりわかってあげられなくて、ごめんなさい…。

 アーチャンが元気な時は、私が帰るといつも窓や、サンルームのガラス越しに迎えてくれました。
 最近はそれもあまりなく、きっと身体がだるく、苦しかったのでしょう。

 今、目の前のアーチャンが、意識がないのに、横たわったまま、歩くような動きをしました。
 「アーチャン…。」
 涙があふれてきます。
 先生が
 「つらかったら、あちらの部屋で待ちますか?」
 と言われましたが、そばにいて、時折身体を撫でたり、「アーチャン。」と呼びかけたりしました。
 アーチャンは意識の底で、私を感じてくれたでしょうか?

 アーチャンは病院嫌いで、いつも病院では緊張していました。
 一度は、猛獣のように声を上げたこともありますし、診察中や入院中暴れたこともあります。
 でも、私が撫でたり、よしよし、と言ってあげたりしていると、嫌いな注射中もおとなしくしていました。
 私がいたら少しは安心できたかな?

 でも、そのうち、アーチャンの前足が空を切るように動きました。
 目を覚ますのかな?と思ったら先生が「苦しいんでしょう。」と、言われました。
 「アーチャン…!」

 アーチャンの心臓が止まりました。
 先生は電気ショックを試みましたが、アーチャンの小さな身体がガクン!となり、私はかわいそうになって「もういいです。」と言いました。
 このまま、眠って天国に行って…。

 「そうですか…。今度はアーチャン戻ってくれなくて…残念でした。」
 先生も今までよくしてくださいました。
 「抱っこしていいですか?」
 管や線を取って、アーチャンを最後に抱っこしました。
 クニャッと力が抜けたようになる身体を抱きながら、泣いてしまいました。

 いつも抱っこしてたけど…、これが最後の抱っこだね。
 ごめんね、ごめんね。アーチャン。
 長生きさせてあげられなくて。
 いつもそばにいれなくて。

 アーチャンは8年の命を閉じました。