そのまま、アーチャンは先生方に最後の処置をしてもらいました。
私は処置室の外で待っているように言われました。
アーチャンが初めて家に来た日を思い出しました。
あの時はまだ目も見えずただ泣いていた。
猫の飼い方が全然わからなかった私。
先の見えない毎日、一概に楽しかったとは言えません。
でもいろいろなことがあった。
小さい頃は噛みついてばかりいたアーチャンも、最後は私を頼っていた。
苦しいところから助けてくれると思っていたのか。
それとも、もうお別れが近いことを、察していたのか。
いじらしく、かわいそう、ごめんなさい。
自分自身毎日が忙しくて、十分なことしてあげられなかった。
まだ一緒の日々があると思っていたのに。
やがて携帯で呼び出した次女が、学校から帰って病院にやってきました。
先生に呼ばれ、処置室にはいると、箱が置いてありました。
中にアーチャンが入っていました。
まだ生きてるみたいだけど、もう目を開けることはないんだね。
次女も私も涙でいっぱいでした。
「先生、今までありがとうございました。」
「元通りにしてあげられなくて。。ごめんなさい。」
そうして、車に乗せて、アーチャンを家に連れて帰りました。
「アーチャンの大好きなおうちだよ。」
ほとんど外に出たことのなかったアーチャンは、この家に一番長くいた住人でし
た。
その日は、幾度も箱を開けてアーチャンを見ました。
だんだん堅くなっていくのが悲しかったです。
明日は、お仕事に行かなければなりません…。
アーチャンの入院手続きを済ませ、5分後に車で家に着いたらすぐに携帯が鳴りました。
病院からで、アーチャンの危篤を知らされました。
なんでも、点滴をしようとしたらアーチャンが暴れ出し、気が高ぶって心臓が止まりましたが回復したそうです。
なんてことでしょう…。
そばにいてあげれば良かったと思いながら、あわてて病院へ戻りました。
病院では処置室で管や線を付けて横たわっていました。
先生がそばで処置をしながら様子を看ていました。
アーチャンの意識はないみたいでした…。
今日は出かけずにずっと家にいれば良かった。
そして抱っこしてあげていれば良かった。
病院でも付き添っていれば良かった。…
いろいろな後悔が頭の中を薄巻いていました。
アーチャンは、ここ半年はずっと病院通いで、家でもインシュリンの注射を毎日していました。
きっと苦しい日が多かっただろうね。
でも猫は苦しくても我慢しちゃうそうです。
あまりわかってあげられなくて、ごめんなさい…。
アーチャンが元気な時は、私が帰るといつも窓や、サンルームのガラス越しに迎えてくれました。
最近はそれもあまりなく、きっと身体がだるく、苦しかったのでしょう。
今、目の前のアーチャンが、意識がないのに、横たわったまま、歩くような動きをしました。
「アーチャン…。」
涙があふれてきます。
先生が
「つらかったら、あちらの部屋で待ちますか?」
と言われましたが、そばにいて、時折身体を撫でたり、「アーチャン。」と呼びかけたりしました。
アーチャンは意識の底で、私を感じてくれたでしょうか?
アーチャンは病院嫌いで、いつも病院では緊張していました。
一度は、猛獣のように声を上げたこともありますし、診察中や入院中暴れたこともあります。
でも、私が撫でたり、よしよし、と言ってあげたりしていると、嫌いな注射中もおとなしくしていました。
私がいたら少しは安心できたかな?
でも、そのうち、アーチャンの前足が空を切るように動きました。
目を覚ますのかな?と思ったら先生が「苦しいんでしょう。」と、言われました。
「アーチャン…!」
アーチャンの心臓が止まりました。
先生は電気ショックを試みましたが、アーチャンの小さな身体がガクン!となり、私はかわいそうになって「もういいです。」と言いました。
このまま、眠って天国に行って…。
「そうですか…。今度はアーチャン戻ってくれなくて…残念でした。」
先生も今までよくしてくださいました。
「抱っこしていいですか?」
管や線を取って、アーチャンを最後に抱っこしました。
クニャッと力が抜けたようになる身体を抱きながら、泣いてしまいました。
いつも抱っこしてたけど…、これが最後の抱っこだね。
ごめんね、ごめんね。アーチャン。
長生きさせてあげられなくて。
いつもそばにいれなくて。
アーチャンは8年の命を閉じました。
2004年の9月8日はアーチャンの亡くなった日。
その頃アーチャンは糖尿病で病院通いでした。
家でも毎日インシュリンを注射していました。
その日アーチャンは朝からだるそうで、調子悪そうだったので、私は用から帰ったら、病院に連れて行こうと思っていました。
昼過ぎ帰ってきたら、アーチャンは娘のベッドの下で、うずくまり、おもらしをしていました。
びっくりして身体を拭いて、キャリーケースに入れ、病院に連れて行きました。
病院でアーチャンはぐったりして、看護婦さんがおしりに体温計を入れたら、いきなり吐きました。
担当の先生が「調子が悪いから、入院させましょう。」といわれました。
これは何度目かの入院でした。
アーチャンはぐったりすると入院、少し元気になると病院で凶暴になり、治療ができなくてすぐ退院となっていました。
この日もそんな繰り返しの一日かと思っていました。
うちの猫アーチャンが亡くなったのは去年の今頃。
糖尿病で毎日インシュリンの注射、病院通いばかりしていました。
アーチャンが亡くなって、本屋も辞めてしまいました。
そして1年…。
気を取り直してまた新しく勤めるようになった私。
そしてまたアーチャンを思い出すようになりました。
アーチャンのことを書き留めておきたいので、ここにアーチャンのコーナー「窓辺の猫」を設けることにしました。
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